仕事が忙しかったり人間関係に疲れ果てたりすると、人間は抑うつ症状といって、精神的なエネルギーが減少したときに見られる意欲の低下や感情の鈍麻などがおこります。このような症状をそのままにしておくと、症状は悪化しうつ病となってしまいます。うつ病の診断は国際的な基準である世界保健機関のものや、米国精神医学会のものが日本でも広く採用されています。うつ病は精神疾患ですから、診断の中心は問診となります。これは非常に医学の中では稀な事です。普通は何か診断の決め手となる指標があります。血液検査の値だったり、レントゲンやCT、MRIなどによる画像所見だったりします。一方、問診という診断方法には、患者の訴えという主観的なものが中心で、客観的な指標がないのです。そのため現在においても、うつ病をはじめ精神疾患の決定的な診断基準の研究は、世界各地で行われています。精神科に行き、うつ病と診断された場合、大きく分けて、通院と入院による治療方法があります。通院による治療は、比較的うつ病が進行していない場合です。病院の中に比べ病院の外は、一般に患者にとってストレスの原因となるストレッサーが多いです。比較的症状が軽い場合は、ストレスへの耐性も十分に残っている場合が多く、通院で治療するほうが入院のように大きく自由を制限されないメリットがあります。入院による治療は、疾患が進行した場合に必要になります。患者が生活する環境下に、ストレッサーをできるだけなくすことが重要だからです。
うつ病を治療する際には、心掛けるべきことがあります。それは医師とのカウンセリングの時には、自分の身体的な症状や精神的な症状をしっかり伝えること、また自分のストレスへの考え方をしっかり医師に話すことです。これはうつ病の治療が薬物療法を行うことと、認知行動療法を行うことに関係があります。うつ病の治療において、薬物療法は、思考障害や意欲障害、感情障害などの様々な精神障害が起こらないようにする目的で行われています。しかし、このような複雑な症状が完璧に消失するといったことはありません。ある症状が問題があったのでそれを抑える薬を飲んだら、今度は今までなくなっていた症状が再発したといったことが頻回に起こります。これを何度も繰り返していく中で、患者に必要な薬物の内容と量が決まってくるのです。このような理由から、医師の問診やカウンセリング時には、しっかりと自分の症状を説明する事が大切なのです。認知行動療法は、患者のストレスへの考え方を修正し、ストレスへの耐性を高める治療方法です。例えば、職場において上司から指示された仕事が大変なものであった場合、患者は大変な仕事をさせるのは上司が自分のことを嫌いだと考えているからだと考えたとします。ここで医師は、大変な仕事を患者にさせようとする理由は他にもあるのではないかと、患者が考えている理由以外の理由を探すように促すのです。上司が患者に期待して大変な仕事を指示したかもしれませんし、実はそんなに大変な仕事ではないのかもしれません。このように、ある事実に対して客観的に捉えられるようになることで、患者は仕事をストレッサーと認識しなくなるのです。このように認知行動療法は医師との対話が、治療に大きく関与するため、しっかりと自分のストレスへの考えを述べることが大切なのです。